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「円安」はなぜ起こる?家計にも役立つ為替のメカニズム

2022/9/15

佐藤静香・ライフデザインFP®

2022年夏、20年ぶりの円安です。 今年に入ってから、外国為替市場では円安・ドル高が急激に進行。「ガソリンや食料品の値段が上がって家計が大変」「円の資産だけではなく外貨も持った方がいい?」円安になったことでこんなご相談が増えています。 ところで円安には「良い円安」と「悪い円安」があると言われています。そこで今回は「円安」のメカニズムについて解説していきます。

「良い円安」「悪い円安」とは?

まず、「円安」とは簡単に説明すると円の価値が安い(下がっている)ということです。 たとえば、1ドル100円の時に10,000円で購入できていた輸入品が、1ドル130円になった場合、13,000円出さないと購入できない状態のことです。 同じ商品なのに手元のお金を多くだす必要があるので、円の価値が下がっている状態と言えます。 日本に住んでいる私たちの立場からは、海外に輸出をする際はメリットとなり、海外から輸入をする際はデメリットとなります。 つまり、立場が変われば「円安」がメリットにもデメリットにも成りえる、ということです。

良し悪しは「円安の恩恵」を受けられるかどうか

では「良い円安」「悪い円安」とはどういうことでしょうか。 「良い円安」とは、日本の企業が輸出産業により利益が上がることで従業員の給料が上昇したり、株価上昇や配当金の増加などで投資家が恩恵を受けられる状態です。 一方「悪い円安」とは、悪い影響が大きく出てしまっている状態のことです。 円安になると輸入産業の業績が悪化します。現在、新型コロナウイルス感染症の影響から米国からの建築資材が高騰していますし、ロシアとウクライナの影響により原油価格が高騰し、日用品や食品などでも物価上昇が続いています。 家計にも影響がでてしまい、このままでは景気が悪くなる可能性があるため、現在の状態を「悪い円安」と表現する人がいるのです。

なぜ円安になるの?円安のメカニズム

「円安」「円高」が起こるメカニズムは、大きく2つに分けることができます。

1.海外との売買で輸入が増えた場合

ひとつは海外との商品やサービスの売買によるもの。 日本の輸出が増えると、海外の人が日本にお金を支払うためにドルを円に交換する動きが活発化されます。すると円の価値が上がり、円高になりやすくなります。 逆に輸入が増えると、円をドルに交換する動きが活発化され、円安傾向になります。

2.海外への預入や外国株の需要が増える

もうひとつは、海外とのお金の貸し借りや投資が挙げられます。 現在、日本の銀行金利はほとんど利息が付かない0.002%程度。それに比べ米国の債券などは金利上昇が続いており、日本の金融商品で預けるより海外の商品に投資したいと思う人が増えています。 そこで円をドルに交換しようとする人が増えるので、円安になりやすいのです。 また海外の企業が業績を伸ばして株価が高くなる可能性があれば、日本人は海外の株に投資をしたいと考えるので、やはり円安になりやすくなります。 円安と円高のメカニズムを大きく2つに分けて説明しましたが、複雑な要因が絡み合って動くことも多いため、将来どちらの方向性へ動くかは分からないのが現状です。 しかし専門家の間では、しばらく円安傾向が続くのでは、という意見が優勢です。

円安で私たちの暮らしはどうなる?

日本は資源を海外に頼っている国なので、日常生活における「円安」はデメリットの方が大きいと考えます。 私たちが普段、口にしているものや身に着けているものは海外から輸入したものが多くなっています。

たとえば、「天ぷらそば」を考えてみましょう。 日本食のような気がしていますが、そば粉の原料である「そばの実」は海外からの輸入に頼っています。1位がロシア、2位が中国、3位がウクライナ(※1)となっており、原料自給率は2割程度です。 そばの上に乗っている「エビ」の輸入先は1位がインド、2位がベトナム、3位がインドネシア(※2)です。日本で食べられている「天ぷらそば」の8割が輸入品と言ってもよいかもしれません。 円安が進んだ場合、海外からの原材料の輸入コストが上がってしまい、「天ぷらそば」が口に入る際の価格はさらに上がってしまいます。また、毎日の食料品、電気代、ガソリン代、衣料品など、生活に密着している物の価格も上がる可能性があります。

※1 2020年 国連食糧農業機関(FAO)の統計(https://www.fao.org/faostat/en/#data/QCL/visualize) ※2 2020年 政府統計の総合窓口(e-Stat)(https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&layout=datalist&toukei=00500100&tstat=000001018079&cycle=7&year=20200&month=0&tclass1=000001018080)

為替と家計はつながっている

毎日のように「円安」のニュースが流れてくると、今まで金融のことに興味がなかった方も、お金に意識が向くと思います。 今後の為替の動きは誰にも分かりません。しかし普段から家計の中身を把握していれば、さらに円安が進んだ場合の対応を早めにとることができるのではないでしょうか。 ムダな買い物を控える、フードロスが起こらないよう適切な量を購入する、エアコンを掃除・お手入れして余計な電力を使わないように気を付けるなど、家計を守るポイントがいくつかあります。 正しく「円安」を理解して、自分たちの生活を守る準備をしていきましょう。

佐藤静香 ライフデザインFP® CFP®(日本FP協会認定)。1級ファイナンシャルプランニング技能士。 信用金庫、証券会社、保険代理店勤務を経てFP事務所を設立。ライフデザインに基づいた家計管理や、将来のライフプランについてのアドバイスが定評。過去の家計診断の実績は約3千件。金融機関での豊富な経験と知識を活かし、働く女性の立場からミレニアル世代を応援しています。

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