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部下が動かないと嘆く上司がよくわかってない事

2023/1/19

東洋経済オンライン

3坪のたこ焼きの行商から、口コミだけで県外から毎年1万人を集める大繁盛店を作り、ユニークな人材育成法をこれまで延べ60万人に伝えてきた永松茂久氏。その永松氏がコミュニケーションの秘訣を明かし、2022年1番売れた会話の本『人は話し方が9割』のシリーズ最新作『リーダーは話し方が9割』(※外部サイトに遷移します)より、「“この人のためなら”と思われるリーダーの話し方」について解説します。

言いたいことはあえて間接的に言う

「自分はこういうことを大切にしている」 「部下にこんな人間に育ってほしいと願っている」 部下にリーダーの本音を真正面から伝えたとしても、なかなか伝わらないときがあります。 その1つの理由は、関係性が近いからです。 身近であればあるほど言葉が入りにくいことだってあります。照れもありますし、いつも聞いているとありがたみがなくなってくるのです。 そして話が伝わりにくいもう1つの理由は、直接言われるとプレッシャーを感じてしまうからです。 近さとプレッシャーゆえに、どんなに熱を込めて伝えたとしても、残念ながら、どんなにありがたい話であったとしても、部下の心に響かないこともあるのです。 こんなとき、うまくいくリーダーが使う2つの有益なテクニックがあります。 まず1つめ、それは、 「他人に向けて自分の思いを伝える場所に部下を連れていく」という方法です。 部下というのは天邪鬼な一面を持っている生き物です。 直接言われると照れてしまったり、プレッシャーを感じてしまうことがある反面、リーダーが他人に向かって話しているときというのは、ことのほかよく聞いているものです。

いや、むしろそのときのほうが、話を真剣に聞いていることも少なくありません。 自分ではなく、他人に思いを伝えている姿や話し方を通して、「リーダーってこう思っていたんだ」と客観的に聞くことができ、理解することができるのです。 つまり直接ではなく、間接的に聞くシーンを演出し、部下が上司の本音を受け入れやすくなるようにするのです。 もう1つは「自分と同じ内容の話をしている人の話を聞かせる」という方法です。 こんな言葉があります。   「親父の話は聞く耳持たぬ。しかし同じことを話す隣の親父の話はすんなり聞ける」 近いからこそ、なかなか話が入らないことだってあります。 そんなときは、自分と似た内容の話をする人の言葉にあえて部下を触れさせることも1つの有効な方法です。

言葉にするかどうかは別として「あ、この人が言ってることってうちのリーダーが言ってることと同じだ」と気づけることも往々にしてあります。 だからこそ、自分が直接話すのではなく、間接的に周りの人の話を通じて自分の伝えたいことを部下に伝えるようにするのです。 人は同じ話でも、誰から聞くかでその浸透力は変わります。 もちろんリーダーは、「自分で伝えてなんぼ」と思うかもしれません。 しかし、一番の目的は 「部下が内容を理解し、自ら行動に移すこと」 なはずです。 自分で伝わりにくいことは、あえて人を通して伝えるということも、結果的には自身が話して伝えたことに変わりはないのです。

同じミスを繰り返す部下に対してどう話すか?

「何度言ったらわかるんだ?」 同じ失敗を繰り返す部下に対してイライラしたり、頭を抱えてしまうことはありますか? これも多くのリーダーたちの悩みとしてあげられることかもしれません。 リーダーはしっかりと伝えたはずなのに、部下にはしっかりと伝わっていない。 これは「伝えた」と「伝わった」が食い違っているのです。 多くのリーダー本で 「一度で伝わると思わないようにしよう。わかるまで繰り返し伝えるべきだ」 という言葉を目にします。そういう意味ではリーダーとは本当に根気のいるポジションだなと常々思います。 この悩みを少しだけ軽くする3つのステップがあります。 1つめ。それは 「理解した内容を相手に話させてみる」 ということです。

しっかりと伝えたつもりであったとしても、相手にはそれぞれの理解度があります。 世の中は、一を聞いて十を知る人ばかりではありません。聞いた一をしっかりと理解するまでに時間がかかる人もいます。 だからこそ 「いま伝えたことに対して、どう理解した? 私に言ってみて」 と相手の口から発言するようにするのです。 そうすることで、相手の理解が間違っている場合は、もうちょっとその部分に絞って丁寧に説明するのがいいでしょう。 2つめが「発表できる場所を準備する」ということです。 例えば「この本を読んで明日のミーティングで内容を要約して10分で話してください」と言われると、読書に対する集中力は爆発的に上がります。 多少強引なようですが、人は自分の言葉で伝えるということを課せられたとき、そのテーマに対して真剣に考えるようになるのです。

オンライン会議、会社のミーティング、コミュニティの発表会など、いろんな発表の場があります。   そうした場所で発言する機会を、あらかじめ準備しているのといないのとでは、人の成長速度はまったく変わります。 人が一番学べるとき。   それは「人に教える立場に立ったとき」です。 自分より下の人ができると、その人は小さなリーダー役になります。いつまでも責任のない立場だと、なかなか人は成長しません。 そうではなく、小さなチームでもいいので、なんらかの形を作り、その人になんらかの教える立場での役割を与えましょう。 その立場に立ったとき、例えば自分が親になったとき、はじめて親のありがたさを感じるように、人ははじめてリーダーの気持ちを理解できるようになります。 教えるということは、つまり「自分の言葉で伝える」ということです。

インプットよりアウトプット。聞いてばかりではなく、教えるということを通して自分の言葉になったとき、人ははじめて理解できるようになるのです。

部下の緊張感をやわらげ、リーダー自身の心を軽く

多くのリーダーにとって、一番嫌な瞬間。「これだけはいつまでたっても慣れることがない」そう思う苦痛の瞬間。 それはおそらく部下に注意をしなければいけないときでしょう。 特にその部下がかわいければかわいいほど、その苦痛は大きく重くリーダーにのしかかってきます。 それはそうでしょう。誰だって嫌われたくはありませんから。 だからと言って、自分の身を守るためだけにその責務を放棄することは、リーダーとしての逃げになってしまいます。 そんな状況のとき、部下の緊張感をやわらげながら、そしてリーダーであるあなた自身の心を軽くする方法をお伝えします。 それは 「話し終わった後の、部下の状態を先に伝える」 ということです。   これだけでは理解ができないと思いますので、詳しく説明します。

「〇〇さん、ちょっといいですか?」 あらたまってリーダーにこう呼ばれると、おそらく下の立場にいる人は、多少の不安を抱きます。 「私、何かミスをしたかな?」 「今日は何を怒られるんだろう?」 そしてその不安は体に緊張を与え、表情も硬くなります。 そんな状態の部下に注意をするのは、リーダーとしても心が軽いものではないでしょう。

そんなとき、優秀なリーダーはまずこう切り出します。 「あらたまって呼んで申し訳ない。今日は君に伝えたいことがあって時間を作ってもらった。この話が終わった後、おそらく君はもっと成長して、明るい気持ちで部屋を出ると思う。それが僕の願いなんだけど、話してもいいかな?」 こう確認をとります。 おそらく部下はなんらかの不安は拭い去れないものの、「はい、お願いします」と答えるでしょう。   これこそが、いい指導をするための第一歩なのです。 そのプロセスを飛ばし、いきなり感情に任せて怒鳴り散らしたり、不安を与えたりするのではなく、まずは相手の心を軽くして、扉をひらいた後に注意するように意識するのが望ましいでしょう。

部下の指導は「聞ける態勢づくり」がすべて

部下だって子どもだって人間です。注意されるときや不利な立場に立ったとき、防衛本能が働き、とっさに身構えてしまいます。 そこをいきなり「おまえは何をやってるんだ!」と頭ごなしに言われると、反論するかは別として、心の中でファイティングポーズを取りながら、心の扉を閉じてしまいます。 こうなると、一見聞いているフリはしているものの、言葉はまったく入らなくなってしまいます。これではお互いに不毛な時間を過ごすだけ。 しかし、リーダーの本当の目的は、感情をぶつけることではありません。相手のミスを修正し、いい方向に導くことのはずです。 だからこそ、いったん冷静になって、相手の心の扉をひらくことに集中するのです。 まわりくどいし、めんどくさい作業かもしれません。しかし、優秀なリーダーはその気持ちをグッと抑えて、まずは必ず相手が話しやすいメンタルを作ります。

リーダーは話し方が9割
参照元:https://toyokeizai.net/articles/-/641207
『リーダーは話し方が9割』(すばる舎)。※Amazonのサイトにジャンプします

まったくやる気のない人は例外として、たいていの人は自分の成長に興味を持っています。 人は指導されるのが怖いのではなく、ゴールが見えない、いつまで続くかわからない不安のほうが怖いのです。 だからこそ、終わった後の状態をあらかじめ示してから注意をするのです。 もう一度言います。部下にも子どもにも感情があります。その感情を力で押さえつけようとすれば、相手は反発するだけです。 いかに自己重要感を傷つけずに大切なことを伝えるのか、おそらくこの課題はここからもリーダーたちにつきまとっていくでしょう。

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